地方百貨店の終焉

社会人大学

岐阜市にある高島屋 岐阜店が来年2024年7月に閉店すると聞き、見学に行ってきました。

新聞等によれば、閉店の主な原因は施設の老朽化対策費約32億円を捻出できなかった事であると言われています。

出典 岐阜新聞Web版 2023年10月15日版

撤退の波紋 岐阜高島屋閉店(中) 改修32億円 交渉決裂 高島屋と建物主、負担巡り | 岐阜新聞Web
来年7月末の閉店が決まった岐阜高島屋(岐阜市日ノ出町)。経営赤字とともに撤退の引き金になったのが、総額32億円とされる建物の基幹設備の改修工事だ。高島屋は、建物の管理会社の関連会社「岐阜土地興業...

高島屋岐阜店は、建物を借りて営業しており、施設点検などについては、オーナー側が行うものとされ、最終的には、改修費をオーナー側、高島屋側両者の交渉が決裂し、閉店に至ったという事です。

ここで、見捨てられているのは、利用者の意見です。

もちろん利用者は、高島屋岐阜店を所有していませんし、経営に参画できる権利や責任を持ち合わせていません。

今回、1日だけそれも数時間の滞在でしたが、やはり高島屋岐阜店を訪れて、買い物を楽しみにしていらっしゃる方々の声を聞くことができました。

9階催事場で婦人服を販売されていらっしゃった名古屋出身の妙齢の女性は、まだJR名古屋駅に高島屋がなかった頃のお話をして下さりました。

名古屋から岐阜市までは、電車で約30分ほどで到着するため、よく高島屋岐阜店に買い物に来られたとの事でした。

また、帰り道 駅へ向かう方向をまた別の妙齢の女性に尋ねたところ、若い頃はよくお店に来たけれど、最近は足が悪くなって行きはご主人に送ってもらったというお話を伺ました。

購入した荷物が重いので帰りはタクシーで帰るというお話を聞き、せっかくなので、岐阜駅まで相席をして頂きました。

車内で和歌山から来たことを告げると、以前は大阪の堺に住んでいて、和歌山の病院に通っていた事を聞き、さらに親近感を覚えました。

岐阜市は城下町であったこともあり、静かで落ち着いた街並みでした。

高島屋岐阜店は、そうした町の商店街の一角にあり、まさに地域の人にとっては先様にお渡しする際の物を購入する場所としてや、家族で食事をする場所などとして利用されてきました。

1977年に開業して以来、約46年に渡り、近隣地域のみならず、周辺地域からも多くの方々が訪れてきた事でしょう。

そうした百貨店が、来年7月に閉店してしまうという事態になっています。

いわゆる経営の論理で言えば、所有者と経営者間で閉店が締結されたのですから、買い物客の意見は取るに足らないものでしょう。

しかし、ほんの数時間滞在した者であっても、このお店がなくなれば困る人は大勢出ることはすぐに予想できます。

その上、百貨店周辺の商店街にも影響が及ぼされるのは必至です。

新聞等では、老朽化対策が32億円かかり、誰も出す人がいなかったので、閉店することになりましたとされています。

32億円かかるから閉店となるのなら、なんとか費用を低減して存続できる道はなかったのでしょうか。

高島屋の発表によると、2023年2月期には、純利益は約3100万円の赤字となるものの、営業収益は131億円あり、営業面から言えばまだまだ存続可能なレベルだと考えられます。

https://www.takashimaya.co.jp/base/corp/topics/231013e.pdf

出典 2023年10月13日  高島屋 発表

そして、高島屋は、この閉店により特別損失を約8億円見込んでいるとの事です。

出典 Reuter web版 2023年10月13日版

高島屋、通期営業益は過去最高へ 前期から8円増配
高島屋は13日、2024年2月期の連結営業利益を375億円から440億円(前年比35%増)に上方修正した。新型コロナ感染症の「5類」への移行後の堅調な消費環境に加え、インバウンドも増加。販管費の削減も寄与し、最高益を更新する。

高島屋が発表したものによると、再三 オーナー側に設備の更新を即してきたが、なされなかったためと記載されています。

確かにその通りなのでしょう。

しかし、岐阜店から、普通電車でも30分の位置にあるジェイアール名古屋タカシマヤは周辺のタカシマヤゲートタワーモールと合わせた売り上げとして1724億円を叩き出しています。

つまり、岐阜店の10倍売り上げる店が、電車で30分の位置にあるという事です。

32億円の設備更新費をめぐって揉めている店を8億円を出して清算する。

透けて見えてくるものがあります。

高島屋岐阜店の撤退は、ただ単に高島屋だけの問題ではなく、岐阜市そのものの存続にも繋がってきます。

JR岐阜駅は、一見リニューアルアルされて綺麗に見えますが、同店舗内にあったJR東海ツアーズには撤退の案内が貼られ、駅から降りて下道を歩くと、昭和時代の名残が垣間見れる店が並んでいます。そして対照的にタワーマンションが何棟か立っています。

名古屋通勤圏の顧客向けなのでしょう。

くしくも、ジェイアール名古屋タカシマヤはその名にあるように、JR東海と高島屋によって作られた店舗です。

この二社が岐阜市をどう見ているのか。今回の高島屋岐阜店撤退により、見えてきたように思われます。

今回、高島屋岐阜店と柳ヶ瀬商店街を少しだけではありますが、散策させて頂きました。百貨店、商店街もやはり新しくリニューアルするべき時期に来ており、他の大型店舗と比べると建物の構造などにおいて、劣っている面は否めません。

しかし、だからといって閉店という根底から 存在を消滅させてしまうことが、周辺地域のみならず、岐阜市にどれだけのマイナスの影響を与えてしまうのかは想像に難くありません。

高島屋岐阜店が撤退すれば、まず間違いなく、連鎖的に撤退する企業が発生するでしょう。

今からでも、当事者だけでなく、行政も含めて完全閉店にならないようにする策を考えるべきだと考えます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました