何度か、和歌山県田辺市を訪れることでいわゆる旧市街地を歩くと、心地良くなることに気づいていきました。
旧市街地の特徴は、江戸時代にできた城下町などに出来ていたことが多く、通りは人が歩くことに適していることです。
江戸時代の街並みは、人が歩く速さで、街並みが変化していき、同時に鳥のさえずりを聞いたり、時々は青空を見上げながら、季節の移ろいを感じたりといわゆる人の身体にフィットした町づくりがなされていました。
もちろん、当時は自動車はなく、人より早く移動する手段は、馬などに限られていました。
それでも、馬よりは、人の方が多く、結果として、人に合った街づくりがなされていくことになります。
時代は流れ、大規模団地やニュータウンと言われる人が住む場所を効率的に設計された町は、一時的には経済的には効率的に見えたかもしれませんが、現在問題にもなっているように持続性という観点が重要視されてきませんでした。
街づくりの良い事例としてよく挙げられるアメリカオレゴン州のポートランド市でも見られるように「歩いて楽しいまちづくり」がやはり町づくりの根幹であると考えられます。
現在、多くのインバウンド旅行者が再度日本を訪れてくれています。
コロナ前には、いわゆるゴールデンルートと呼ばれる東京、名古屋、京都、大阪と言われる日本の大都市を訪問される方が多かったのですが、ひと通り大都市を巡った方は、今度は飛騨高山や、倉敷など地方都市を訪れて頂いています。
大都市中心部は、それぞれの地域の魅力があるものの電車や交通網が発展し、ビル群に囲まれている感があります。
一方、地方都市は大都市ほど高いビルが少なく、場所によれば昔ながらの建物がリニューアルされながら維持保存されています。飛騨高山市の合掌造りや倉敷市の美観地区などが有名です。
もちろん、観光客に来て頂くことが旧市街地の存在理由ではなく、やはり旧市街地に住む方にとって暮らしやすい町であることを第一にするべきです。
私の住む和歌山市は、ところどころに戦前から残っている地域はありますが、田辺市のようにいわゆる旧市街地と呼ばれる場所はもう無くなってしまっている感じがします。
私はまちづくりというのは町のアイデンティティを作っていくことだと感じています。論理的にはまだまだ説明するのが難しいですが、日本各地を十数箇所を巡った感想が、それぞれの町や地域の魅力を維持発展し、外部に伝えていくことが町の持続的発展に繋がることであると頭ではなく心で感じています。
すでに、今までに各地の町は、その町にある自然や作物、資源を利用することで郷土料理や建築物を作り上げてきた実績があります。
近代的な上下水道の整備や過ごしやすい空調設備の設置は、必要でありますが、付随するものであり、町の持続的魅力になるものではありません。
その町に住む人々が、自分たちの町に誇りを持ち、楽しく過ごすことが町づくりの根幹であり、先人がなされた事業に感謝し、さらにブラッシュアップしていくことが町の持続に繋がっていくと考えます。
田辺市は、ぜひ旧市街地を存続しながら、新たな町づくりを行って頂きたいと切に願います。
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